相続Q&A

Q1. 相続手続きはいつ頃から始めればいいでしょうか?

以下の期限を意識してなるべく早く始めることをおすすめします。

①相続開始後3か月以内
相続放棄を希望する場合、相続開始後3か月以内に家庭裁判所に対して相続放棄を希望することを伝える必要があります。相続放棄をすることで被相続人(亡くなられた方)に借金があった場合もその承継を拒否することができます。被相続人の資産と負債の調査に時間がかかるときは、家庭裁判所に対して手続きをすることで3か月以内という期間を延ばしてもらうことも可能です。
何もしない場合、単純承認となり被相続人の資産と負債を承継することになります。
したがって、早期に被相続人の資産と負債を把握する必要があります。
当事務所では被相続人の資産と負債の調査(相続財産調査)をおこなっております。

②相続開始後10か月以内
相続税は相続開始後10か月以内に申告と納税をする必要があります。
相続税は全ての相続人が納税すべきものというわけではありませんが、法改正により相続税の課税対象者の割合は増加しています。
多くの方が相続税の申告期限までに遺産分割協議の成立を目指していますが、この期限までに遺産分割協議がまとまらない場合は未分割のまま期限内に申告と納税をすませることで無申告加算税や延滞税を避けることができます。そして、遺産分割協議が終わった後に申告をやり直すことになります。
相続税については税理士にご相談ください。当事務所は提携している税理士がおりますので、ご希望がございましたらご紹介可能です。

③相続の開始と遺留分侵害の贈与又は遺贈を知ったときから1年以内(かつ相続開始の時から10年以内)
遺留分侵害額の請求権は上記の期間の経過により時効消滅するので、注意が必要です。
遺留分侵害額の請求にあたっては、被相続人の資産と負債の把握が必要ですので、早期に調査を進めることが大切です。
当事務所では被相続人の資産と負債の調査(相続財産調査)をおこなっております。

Q2. 遺言がない場合、残された財産はどうやって分けるのですか?

遺言がない場合、相続人全員で遺産分割協議をおこなうことになります。

遺産分割協議がまとまらなかった場合には、遺産分割調停によって解決を図ることとなります。
遺産分割調停は、申立てをおこなう相続人以外の相続人(相手方といいます。)の住所地を管轄する家庭裁判所に対して申し立てます(例えば、申立てをおこなう相続人が東京都に住んでいて、他の相続人が神奈川県と埼玉県に住んでいるとすると、神奈川県の家庭裁判所か埼玉県の家庭裁判所に申立てをおこなうことになります。なお、当事者が合意した家庭裁判所も管轄権を有します。)。遺産分割調停では、家庭裁判所の調停委員が間に入る形で話合いをおこない、合意の成立を目指していきます。

遺産分割調停でも合意が成立しない場合、審判という手続きに移行します。この審判手続きでは、裁判官が遺産分割審判を出して遺産分割方法を決定することとなります。

法律にしたがった判断がなされる遺産分割審判とは異なって遺産分割調停では柔軟な解決を図ることができますので、遺産分割調停での合意成立が望ましいと考えています。

当事務所では、遺産分割協議・遺産分割調停・遺産分割審判、いずれの段階でも代理人として相続人となった方のためにご尽力することが可能です。
遺産分割でお悩みの方は是非当事務所の弁護士にご相談ください。

Q3. 遺言の内容と異なる遺産分割はできますか?

相続人全員の合意があれば、遺言の内容と異なる遺産分割も可能です。
法律にこのように書かれているわけではありませんが、このように考えられています。

例えば、父親がすでに亡くなっていて、母親が3人の娘がいる状況で、「長女に全財産を相続させる。」という内容の遺言を残して亡くなった場合を考えます。
ここで特段の合意がなければ、長女が全財産を承継しますが、三姉妹が合意して遺産を3分の1ずつ分けるということも可能です。

もっとも、民法1013条1項において「遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない。」とされていることから、遺言執行者との調整が必要な場合があります。

Q4. 遺産分割にはどんな方法があるの?

遺産分割には、
1.現物分割
2.代償分割
3.換価分割
4.共有分割
という4つの方法があります。

それぞれについて説明します。
まず、「1.現物分割」とは、個々の財産の性質を変えずに分割する方法です。例えば、自宅は長男が相続し、預貯金は二男が相続するというような分割方法です。この現物分割が遺産分割の原則的方法です。
しかし、一筆の土地の現物分割などでは難しい問題が生じることがあります。

次に、「2.代償分割」ですが、ある相続人が法定相続分を超える額の財産を取得する代わりに他の相続人に対し代償金を支払うという分割方法です。この代償分割では、財産を取得する相続人が代償金を支払うことができるかがポイントになってきます。遺産分割調停の場面では、代償金の支払い能力があることの証明として預金の残高証明書や預金通帳の写しなどを提出する必要がある場合があります。

「3.換価分割」とは、遺産を売却して換金した後に代金を分配する方法です。この換価分割は、遺産分割調停では現物分割が難しく代償分割もできない場合におこなわれる分割方法です。

「4.共有分割」とは、例えば父親がすでに亡くなっておりその後、母親の相続が発生した際に母親が所有していた家と土地を子ども3人でそれぞれ3分の1ずつの共有とするような分割方法です。不動産を共有分割するとその管理や売却が一人が所有している場合と比べると難しくなります。
共有分割は問題の先送りであり、基本的に望ましくないと考えております。

なお、相続人どうしの話合いがまとまるのであれば、どのような遺産分割方法でも問題はありませんが、遺産分割審判では、1.現物分割→2.代償分割→3.換価分割 →4.共有分割の順で検討がおこなわれます(現物分割が困難な場合に代償分割を検討し、代償分割も困難な場合に換価分割を検討し、換価分割も困難な場合に共有分割とされます。)。

当事務所は相続を中心に扱っております。
遺産分割でお悩みの方は是非当事務所の弁護士にご相談ください。

Q5. 遺産相続に期限はあるのでしょうか?

遺産分割協議をいつまでにしなければならないという期限はありません。

もっとも、相続税の申告・納付の期限が被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内ですので、相続税の申告・納付の期限までに遺産分割協議の成立を目指される方が多いです。

また、不動産については法改正により2025年4月1日から、相続登記の申請をすることが義務になりました。
遺言によって不動産を取得した相続人は所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をすることが義務となり、遺産分割によって不動産を取得した相続人は遺産分割の成立の日から3年以内に相続登記の申請をすることが義務となりました。
正当な理由なく義務に違反した場合は10万円以下の過料(罰金のようなものですが、前科がつくわけではありません。)がかされるおそれがあります。
なお、2024年4月1日以前に相続が発生した場合も、3年の猶予期間はあるものの、相続登記の申請は義務となりました。

また、法改正により、2023年4月1日からは、特別受益・寄与分の主張は、相続開始の時から10年以内にしなければならないこととされました。
2023年4月1日以前に発生した相続についてもこの法改正は適用されますので注意が必要です。
具体的には、被相続人の生前に他の相続人が被相続人から多額の贈与を受けておりそれを考慮して遺産分割がなされるべきだという主張等(特別受益の主張)や介護等をおこない被相続人の財産の維持又は増加に特別の寄与をしたのでその寄与を考慮して遺産分割がなされるべきだという主張(寄与分の主張)は、相続開始後10年を過ぎるとできないことになりました。
それでは、相続開始後10年を過ぎると遺産分割はどのようになされるかというと、法定相続分(被相続人が遺言で指定していた場合は指定相続分)で分割されることになります。

当事務所は相続を中心に扱っており、遺産分割協議の早期成立のために尽力することができます。
また、税理士・司法書士とも連携しており、相続税申告・相続登記が必要な場合であっても安心してご相談いただけます。
遺産分割でお悩みの方は是非当事務所の弁護士にご相談ください。

Q6. 相続時に遺産分割協議書の作成は必須ですか?

法律上の作成義務はありませんが、遺産分割協議書は作成すべきです。 遺産分割協議書を作成することではじめて、どのような内容の遺産分割協議がおこなわれたのか形に残すことができます(ただ話をしただけですと、後から相続人間で記憶違いや認識の相違でトラブルが起きてしまう可能性があります。)。 そして、遺産分割協議書には相続人全員がその実印で押印します。これは相続人全員がその真意に基づいて遺産分割協議に合意したことを示すためです。なお、以下の各場面で遺産分割協議書の提出を求められることがありますが、その際は印鑑証明書もあわせて提出します。

  • 不動産の名義変更(相続登記)の場面:法務局に遺産分割協議書の提出が必要な場合があります。その他の必要書類については司法書士からご説明いただけます。
  • 相続税申告の場面:税務署に遺産分割協議書の提出が必要な場合があります。その他の必要書類については税理士からご説明いただけます。
  • 銀行等での預貯金の払戻し・名義変更の場面:銀行等に遺産分割協議書の提出が必要な場合があります。

一般的には、いずれの場面でも相続人全員が実際に押印した遺産分割協議書の原本については、その返却を希望すればご返却いただけます(原本還付といいます。)。

当事務所は、税理士・司法書士とも連携しており、相続税申告・相続登記が必要な場合であっても安心してご相談いただけます。

Q7. 相続人に認知症の者がいる場合はどうなるの?

遺言がある場合は、そのとおりの分割となりますが、遺言がない場合は、相続人全員での遺産分割協議が必要となります。
しかし、遺産分割協議をおこなうためには判断能力が必要ですので、認知症により判断能力が低下した人がいると遺産分割協議をおこなうことができません。
このような場合、家庭裁判所に成年後見の申立てをおこない成年後見人を選任してもらい、その認知症の方の代わりに成年後見人と遺産分割協議をおこなうという対応方法があります。

なお、成年後見の申立てをおこなうにあたっての標準的な添付書類は以下のとおりです。
また、申立てをおこなってから審判(家庭裁判所の判断)がでるまでの期間は、1か月程度が多く、3か月以内でほとんどの判断がなされるという状況ですので、早めの対応が必要です。

【標準的な添付書類】
・本人の戸籍謄本(全部事項証明書)(発行から3か月以内のもの)
・本人の住民票又は戸籍附票(発行から3か月以内のもの)
・成年後見人候補者の住民票又は戸籍附票(発行から3か月以内のもの)
 ※ 成年後見人等候補者が法人の場合には、当該法人の商業登記簿謄本(登記事項証明書)
・本人の診断書(発行から3か月以内のもの)
・本人情報シート写し
 書式等については裁判所ホームページに記載があります。
・本人の健康状態に関する資料
 介護保険認定書、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳、身体障害者手帳などの写し
・本人の成年被後見人等の登記がされていないことの証明書(発行から3か月以内のもの)
 東京法務局後見登録課または全国の法務局・地方法務局の本局で発行するもの。
・本人の財産に関する資料
 ・預貯金及び有価証券の残高がわかる書類:預貯金通帳写し、残高証明書など
 ・不動産関係書類:不動産登記事項証明書(未登記の場合は固定資産評価証明書)など
 ・負債がわかる書類:ローン契約書写しなど
・本人の収支に関する資料
 ・収入に関する資料の写し:年金額決定通知書、給与明細書、確定申告書、家賃、地代等の領収書など
 ・支出に関する資料の写し:施設利用料、入院費、納税証明書、国民健康保険料等の決定通知書など

当事務所は相続を中心に扱っており、相続人中に認知症の方がいらっしゃるケースも対応可能です。
遺産分割でお悩みの方は是非当事務所の弁護士にご相談ください。

Q8. 相続人に未成年者がいる場合はどうなるの?

遺言がある場合は、そのとおりの分割となりますが、遺言がない場合は、相続人全員での遺産分割協議が必要となります。
以下の2つの場合に分けた対応が必要となります。

1、親と未成年者がともに相続人である場合
例えば、夫婦の間に子どもがいて、夫が亡くなり子どもが未成年者という場合です。このとき、妻(母親)と子どもとは遺産分割協議において利益相反の関係になりますので、子どもについて家庭裁判所に特別代理人の選任申立てをおこなう必要があります。
なお、特別代理人の選任申立ては、子どもの住所地を管轄する家庭裁判所に対しておこなうことになります。

2、未成年者は相続人であるが、親は相続人でない場合
例えば、父母が離婚した後、親権者ではない父親が死亡したという場合です。このとき、親権者である母親は、離婚しているので父親の相続人にはなりません。母親と子どもとの間に利益相反の関係は生じませんので、親権者である母親は子どもの法定代理人として遺産分割協議に関与することができます。
なお、未成年の子どもが複数いる場合、遺産分割協議において子どもどうしで利益相反の関係になりますので、親権者である母親が法定代理人として関与できるのは子ども1名に対してだけであり、他の子どもについては家庭裁判所に特別代理人の選任申立てをおこなう必要があります。

当事務所は相続を中心に扱っており、相続人中に未成年者がいらっしゃるケースも対応可能です。
遺産分割でお悩みの方は是非当事務所の弁護士にご相談ください。

Q9. 不動産や預金、株等の名義変更はどうすればよいのでしょうか?

遺言がある場合は、その遺言を、預金であれば銀行等に提出し、株であれば証券会社に提出して名義変更をおこなうことになります。

遺言がない場合は、相続人全員で遺産分割協議をおこない、遺産分割協議書を銀行や証券会社に提出して名義変更をおこなうことになります。遺産分割協議書は相続人全員が実印で押印します。そして、実印であることが確認できるように印鑑証明書も提出します。

不動産の名義変更(相続登記)は、司法書士に依頼して手続きをおこなってもらうことが多いです。遺言がある場合に遺言の提出が必要で、遺言がない場合に遺産分割協議書の提出が必要なのは、預金や株と同じですが、その他にも必要な書類があり、これは司法書士から説明してもらえます。
当事務所は提携している司法書士がおり、ご紹介することが可能です。

なお、預金・株の名義変更については遺言や遺産分割協議書の他にも各種の書類が必要となりますので銀行や証券会社への問合せは必須です。
例えば、2023年に当事務所が担当した案件では三菱UFJ銀行での預金の払戻しの手続きに以下の書類が必要でした(案件ごとに必要書類は異なります。)。

  • 相続届(三菱UFJ銀行が用意している書類)
  • 通帳
  • 戸籍謄本(被相続人の出生から死亡までのもの)
  • 印鑑証明書(相続人全員分と手続きをおこなった弁護士の分)
  • 委任状(手続きを弁護士に委任するという内容の委任状)
  • 遺言書
  • 遺産分割協議書(担当した案件の事情により遺言書と遺産分割協議書の両方が必要でした。)

Q10. 自宅の評価の仕方はどのようにするのですか?

法律上、評価方法が決まっているわけではありませんので、相続人間の合意により評価額を決定します。
以下では不動産の評価にあたり使用されることがある評価方法についてご紹介します。

【戸建てについて】
土地部分:路線価を0.8で割って算出する方法や固定資産税評価額を0.7で割って算出する方法が使用されることがあります。 家屋部分:固定資産税評価額を家屋の評価とする方法が使用されることがあります。

※不動産業者の査定書を利用する方法や費用はかかりますが不動産鑑定士に鑑定を依頼する方法もあります。

【マンションについて】
不動産業者の査定書を利用する方法や費用はかかりますが不動産鑑定士に鑑定を依頼する方法があります。

当事務所は相続を中心に扱っており、提携している不動産会社もございます。
遺産分割でお悩みの方は是非当事務所の弁護士にご相談ください。

Q11. 共有不動産の相続方法について

まず、被相続人が不動産の共有持ち分を有していた場合(ある不動産を被相続人が誰かと共有していた場合)であっても、基本的には通常の相続と変わりありません。

被相続人が遺言をのこしていたのであれば、その内容にしたがって相続されますし、遺言がない場合には、相続人全員で遺産分割協議をおこなうことになります。
なお、被相続人の遺言を探すには、引出しや金庫の中を確認することはもちろん大事ですが、公証役場や遺言書保管所に照会することもできます。被相続人が公正証書遺言を作成したかいなかについては公証役場で調べてもらうことができます。当事務所にご依頼いただいた場合、練馬公証役場で調べてもらいます(検索システムを利用して調べてくれますので全国どこの公証役場で作成した公正証書遺言であってもその存否を教えてもらえます。)。

当事務所では事前に必要書類を確認し提出の上、予約してうかがいますので、うかがったその日に検索結果を教えていただけます。また、被相続人が自筆の遺言を法務局に保管してもらっていたかについては、遺言書保管所に照会することで回答をいただけます。当事務所では千代田区にある東京法務局遺言書保管所に照会しております。この照会自体は郵送で可能ですが、当事務所にご依頼いただいた場合でも回答書の送付は法律事務所宛にはしないという運用がなされておりますので、遺言書保管情報証明請求書に同封する返信用封筒の宛先は依頼者宛とし回答書が返送されましたらその内容を教えていただくという対応をとっております。調査の結果、遺言がなければ相続人全員で遺産分割協議をおこなうことになります。

遺産分割では、長男が不動産の共有持ち分を取得し、長女が預貯金を取得するというように個々の財産の性質を変えずに分割する現物分割という方法が考えられます。また、相続人が長男・二男の2名である場合に長男が不動産の共有持ち分を取得し、二男に対してその相続分に相当する金銭(代償金)を支払う代償分割という方法も考えられます。被相続人がある土地の2分の1の共有持ち分を有しており、相続人が長女・二女・三女の3名である場合に相続人がその相続分で共有する共有分割という方法も考えられます(この場合、1/2×1/3=1/6ずつ共有する形になります。)。

一般的には、共有状態は望ましくありません。なぜなら、管理や売却に制約がかかるからです(ここでいう売却とは全体の売却のことです。もちろん、共有者が自分の共有持ち分を売却することは可能ですが、買い手は限られてきますし価格は低くなってしまいます。)。したがいまして、遺産分割の場面でも共有分割は避けた方がよいです。
そして、最終的な共有関係の解消方法としては、相続人がその共有持ち分を他の共有者に売却したり、あるいは逆に相続人が他の共有者からその共有持ち分を買い取ったり、相続人と他の共有者が共同で第三者に売却したり、といった方法が考えられます。共有関係の解消について相続人と他の共有者との間で協議がまとまらない場合、または協議をすることができない場合は、共有物分割訴訟を提起し裁判所に共有物の分割をしてもらうことができます。

また、共有不動産について共有者の一人が亡くなって相続人がいないときは、その共有持ち分は他の共有者に帰属することとなります(民法第255条)。

当事務所は相続を中心に扱っており、共有不動産の遺産分割についても対応可能です。
共有不動産の遺産分割でお悩みの方は是非当事務所の弁護士にご相談ください。

Q12. 相続した土地について売却したいが、どのような相続手続きを経るのか?

相続した土地を売却したい場合、以下の二つの方法が考えられます。

1、売却を希望する相続人の方が相続した土地全体を取得することとして、他の相続人にはその相続分に応じた金銭(代償金)を支払うこととする方法(代償分割) 2、相続人全員で相続した土地を売却しその代金を相続人全員で分割する方法(換価分割)

それぞれの分割方法について詳しく説明します。
まず、1の代償金を支払う方法のメリットは、相続した土地を取得した相続人の方一名が売主となって不動産を売却しますので、手続きがスムーズという点です。
一方、デメリットは、相続した土地の評価を相続人間で合意できるかという点です。相続した土地の評価方法としては、固定資産税評価額を0.7で割って算出する方法や不動産会社に査定してもらう方法などがありますが、いずれにしても相続人間で評価について合意できないと代償分割をおこなうことはできません。
また、不動産の取得を希望される方が代償金の支払いをしなければならないということもデメリットです。一般的に不動産の代償分割の代償金は高額になるからです。代償金の支払いのタイミングを相続した土地の売却後とすることも考えられますが、この場合、他の相続人の同意を得られるかが問題となります。

次に2の相続人全員で売却する方法のメリットは、代償金を算出するために相続した不動産の評価をする必要がない点と代償金の支払いが不要という点です。
一方、デメリットは、相続人全員が売主となりますので不動産の売買契約の手続きがはんざつとなるおそれがある点です。また、手続きだけでなく、いくらで売却するかといった売買契約の内容についても合意が難しくなるおそれもあります。

※いずれの方法をとる場合であっても、不動産の売却にあたっては、土地の名義を被相続人から相続人に変更する必要があります。この名義変更手続き(相続登記)は司法書士がおこないます。また、税金の問題について税理士に相談することをおすすめします。

当事務所は相続を中心に扱っており、税理士・司法書士・不動産会社と連携しております。
相続不動産の売却でお悩みの方は是非当事務所の弁護士にご相談ください。

Q13. 土地を相続し相続登記しなかった場合、どのような不都合が生じますか?

令和6(2024)年4月1日から相続登記が義務化されます。

なお、相続登記が義務化されるのは、令和6(2024)年4月1日からですが、それ以前の相続でも、不動産の相続登記がされていないものは、義務化の対象になりますので、注意が必要です。
正当な理由がないにもかかわらず登記申請をしなかった場合には、10万円以下の過料が科されることがあります。
ただし、過料は、罰金等とは異なり、犯罪に対する刑罰ではありません。したがいまして、過料が科されても前科がつくわけではありません。

相続登記の義務化の内容は以下のとおりです。

相続・遺言・遺産分割協議により不動産を取得した相続人の方は、所有権を取得したことを知った日(相続・遺言の場合)、または、遺産分割協議が成立した日(遺産分割協議の場合)、から3年以内に登記の申請をしなければならなくなるということです。
登記簿を見ても所有者が分からない土地の面積は、全国で九州本島の大きさに匹敵するともいわれており、この所有者不明土地の解消のための法改正です。

以上は法律上の義務という観点からのご説明でしたが、実質的にも相続登記は早めにおこなうのがおすすめです。
相続登記の前提として遺言がなければ、相続人全員で遺産分割協議をおこなうこととなりますが、相続登記を放置することで相続人の数が増え続ける可能性があります。そうすると、戸籍を調べることによる相続人の調査に費用と時間がよりかかってしまいます(戸籍は1通取得するのに450円または750円かかりますし、通常、郵送により戸籍の請求をおこなうため郵便切手代もかかります。)。また、相続人の中に認知症の方や行方不明者がいる可能性も生じ、このような方々への対応にも費用と時間がかかります。

相続登記のために遺産分割協議が必要だが、そもそも他の相続人がだれでどこにいるのかもわからないというような場合も相続を中心に取り扱っている当事務所の弁護士にご相談ください。

Q14. 葬儀費用は遺相続財産から差し引きできますか

葬儀費用は、相続後に発生しているので被相続人(亡くなられた方)の債務ではありません。
当然に葬儀費用を遺産総額から差し引くことができるわけではありません。もっとも、相続人間で合意の上、葬儀費用を遺産総額から差し引いて残りを相続人間で分割するということは可能です。
相続人間で葬儀費用の負担者について合意ができない場合は、訴訟で決着を付けることになります。

葬儀費用の負担者については、
①喪主が負担すべきであるとする説
②相続人が共同で負担すべきであるとする説
③相続財産から負担すべきであるとする説
④その地方の慣習にしたがって負担すべきであるとする説
があるとされています。

近年の裁判所の判断は、①の喪主が負担すべきであるとする説が主流になっています。
なお、①の喪主が負担すべきであるとする説を採用したとして紹介されることが多い名古屋高等裁判所の平成24年3月29日の判決の事案は、親が亡くなって相続人は二人の子でしたが、20年以上、親子の交渉はなく、一方で比較的密な交流があった被相続人の兄弟が喪主を務めたという事案でした。判決では、長男は葬儀に出席しなかったことも認定されています。このような事案では、葬儀費用を喪主が負担すべきという判断は妥当な結論のように思われます。

Q15. 葬儀代は誰が負担すればいいのか?

葬儀代は、相続後に発生しているので被相続人(亡くなられた方)の債務ではありません。葬儀会社との関係では、葬儀会社と契約をした方が支払いをおこなうことになります。一方で、相続人の間で誰が最終的な負担者になるかについては見解が分かれています。相続人間で話がまとまらず、家庭裁判所の遺産分割調停手続きがおこなわれる場合、相続人全員が相続分に応じて葬儀代を負担することで話がまとまることが多いです(例えば、子ども3人が相続人の場合、法定相続分であれば、葬儀代を3分の1ずつ負担するという形です。)。遺産分割調停手続きで合意ができない場合は、訴訟で決着を付けることになりますが、近年は裁判所は喪主が負担するという判断をすることが多いです。

参考までに喪主が負担するという判断をおこなった名古屋高等裁判所の平成24年3月29日の判決を以下に引用してご紹介します。
「亡くなった者が予め自らの葬儀に関する契約を締結するなどしておらず、かつ、亡くなった者の相続人や関係者の間で葬儀費用の負担についての合意がない場合においては、追悼儀式に要する費用については同儀式を主宰した者、すなわち、自己の責任と計算において、同儀式を準備し。手配等して挙行した者が負担・・・するものと解するのが相当である。
なぜならば、亡くなった者が予め自らの葬儀に関する契約を締結するなどしておらず、かつ、亡くなった者の相続人や関係者の間で葬儀費用の負担についての合意がない場合においては、追悼儀式を行うか否か、同儀式を行うにしても、同儀式の規模をどの程度にし、どれだけの費用をかけるかについては、もっぱら同儀式の主宰者がその責任において決定し、実施するものであるから、同儀式を主宰する者が同費用を負担するのが相当・・・であるからである。」

Q16. 香典返しは誰がどこから支払うのですか?また、香典は遺産に含まれるのですか?

香典返しは、慣習上、喪主が香典から支払うことが多いと思われます。
また、香典は、死者への弔意、遺族へのなぐさめ等を目的とする喪主や遺族への贈与であるので、遺産分割の対象とはなりません。もっとも、相続人全員の合意により香典を遺産分割の対象とすることは可能です。香典が、香典返しと葬儀費用に充てられた後、なお残金が生じた場合は、喪主に帰属するという見解と相続人に帰属するという見解があります。
香典を受領された方は、香典の明細を他の相続人に対して明らかにすることができるように整理しておいた方がよいと思われます。

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